ECOLOGY & GREEN ENERGY

環境
生物
エネルギー

  日本では少子高齢化が問題となり、国内総人口はこの十数年間で増加から減少傾向にシフトしています。一方、地球の総人口は100年間で軽く見積もっても50億人以上増加しており、数年のうちに80億人に達し、その後も増加の一途を辿ると予測されています。また、各国の経済成長は続いており、止まらない世界的な人口爆発に伴い、あらゆる天然資源を消費するとともに大量の二酸化炭素ガスを排出し地球温暖化を加速させています。更に、森林伐採などの直接的な自然環境破壊もあいまって、生物の生息環境は悪化し、生態系に影響が現れはじめています。

 一方、先進国を中心に教育レベルが上がり、近年の著しい技術発展によってエネルギーの消費効率は向上しており、同量の製品を生み出すのに必要なエネルギー量はこの50年間で半分以下にまで低減され、将来に向けた希望も見えてきています。今後、エネルギー問題は更に深刻化していくことが必至であるため、石油・石炭・天然ガスに代表される枯渇性資源を用いた発電を可能な限り減らし、クリーンエネルギーを利用した分散型発電システムの普及に努めることが重要です。大学の一研究室レベルでできることは限られますが、これらの環境問題に対する意識を根底に置いて、研究活動を行いたいと考えています。

 さて、弊研究室ではクリーンエネルギー×パワーエレクトロニクスをキーワードに研究を行なっています。学術的な観点からは回路理論の発展、新回路方式および制御方式の提案等に力を入れ、産業応用の観点からは、クリーンエネルギーを用いた発電を普及させることを視野に入れ、大学および企業関係者と分野横断的に連携し、ものづくりに携わっています。以下、学術面に絞って研究内容を簡単に紹介します。

分岐解析

研究内容

  電力変換回路の多くは、回路に含まれるスイッチングデバイスの切り替え動作に応じて、複数のサブシステムが切り替わる断続動作特性を有しています。スイッチング動作に伴う非線形性や回路パラメータの変化に応じ、電力変換回路には電流や電圧波形の振る舞いが定性的に変化する分岐現象が生じることが知られています。

 電力変換回路に生じる分岐現象を解析することは、学術的な観点からは回路理論の発展に直結し、工学的応用の観点からは回路設計にフィードバックされます。分岐現象の解析手法として、様々なアルゴリズムが提案されていますが、弊研究室ではモノドロミ行列を用いた解析アルゴリズムを中心に汎用的解析手法の構築を目指しています。

 図は回路方程式がn次元で記述される電力変換回路の解軌道を表しています。灰色の解軌道は1周期軌道であり、黒色の解軌道は固定点近傍に初期値を有する解軌道です。それぞれの解軌道はポアンカレ断面を出発後にスイッチング断面へ到達し、サブシステムの切り替わりを経て再びポアンカレ断面に戻ってきます。この過程において、初期値に与えられた摂動が、スイッチング動作を経てポアンカレ断面に再び戻ってくるまでの間にどの程度発達したのかを表す指標がモノドロミ行列より得られ、回路動作の安定性を評価可能となります。

 近年、クリーンエネルギー発電デバイスを電源とする電力変換回路、小型化・高効率化を見据えてソフトスイッチングを導入した共振型電力変換回路など、新たな構成の回路の開発が進められています。これに伴い、既存手法を新回路に適用可能な形に改善し、理論の正当性を確認するとともに新回路が持つ定性的性質を解明し、回路理論の発展および回路設計にフィードバックすることが重要です。

必要とされるスキル

C言語を用いたプログラミング
MATLABを用いたプログラミング
行列および微積分に関する知見
分岐理論

安定化制御

研究内容

  一般に、電力変換回路の設計においては電流・電圧リプルが小さくなるよう設計することが定石です。特に、回路中の電圧や電流をセンシングし、所望のレベルに保つようフィードバック制御を施した電力変換回路は、解の状態や時刻に依存してスイッチが切り替わる断続動作特性を有しています。この種の電力変換回路は、回路パラメータの選定によっては回路動作が不安定化し、電流・電圧リプルが増加するため、使用できる回路パラメータの設計範囲が限定的となる傾向にあります。

 本研究ではカオス制御理論を応用し、電力変換回路の不安定動作領域での回路動作を安定化させ、電流・電圧リプルを低減させる制御手法を構築しています。カオス制御には様々な手法があり、弊研究室では主に2種類のアプローチをとっています。一つ目は、離散写像の初期値微分に基づく手法です。本手法は、「分岐解析」において紹介したモノドロミ行列を用いた安定性解析手法を応用し、離散写像の初期値微分とパラメータ微分を計算し、制御ターゲットの解軌道を所望の不安定周期軌道に強制的に制御する手法です。マイクロコンピュータへの実装も可能で、理論・実験の両面から制御アルゴリズムを構築しています。

 一方、動画に示す手法はピーク電流制御昇圧型DC-DCコンバータに対して適用した微小振幅を用いたカオス制御手法です。図中の赤色波形は制御器に印加される閾値、緑色波形はインダクタ電流を電流センサでセンシングし増幅器を介して電圧レベルを増幅した波形、水色波形はインダクタ電流波形、黄色波形はスイッチング信号波形に対応しています。閾値に微小振幅を印加すると、電力変換回路の回路動作安定度が増し、はじめは不規則な振動を呈するインダクタ電流波形が安定化され、スイッチングリプルが低減される様子を示しています。本制御手法はシンプルかつ効果的なカオス制御手法であり、今後の応用も期待できます。

必要とされるスキル

C言語を用いたプログラミング
微積分に関する知見
カオス制御理論
マイクロコンピュータへのプログラミング

回路設計

研究内容

  企業や他大学の研究者と分野横断的に協働し、産業応用を見据えた回路設計開発に従事しています。作業工程は部品選定から始まり、基板やブレッドボードを用いた基本動作確認、回路設計ソフトAltium Designerを用いたSchematic図、PCB図などの回路設計、基板加工機を用いた回路実装、回路実験に基づく動作確認などがあげられます。研究室内で所望の回路動作が確認できれば、将来的な量産化を見据えて回路設計データを抽出し、外注による集積化実装と動作確認を経て量産化体制を整えています。

必要とされるスキル

パワーエレクトロニクスに関する知見
最新回路素子に関する知見
Altium Designerを用いた回路設計

研究開発ストラテジー

  • 情報収集

    論文調査や国内外の学会参加によって情報を収集し、今後需要が見込まれる回路にターゲットに絞ります。

  • 回路の定性的性質の調査

    広いパラメータ空間で動作解析し、数学的観点から回路の定性的性質を解明します。

  • 回路実験

    回路実験を行い、数学的観点から明らかにした回路の定性的性質を検証します。

  • 論文執筆

    新たな結果の得られ、理論・実験の両面から正当性が確認できた場合、データをまとめて論文を執筆します。

  • 回路設計

    量産化および集積化実装のためにAltium Designerを用いて回路設計を行います。

  • 量産化体制の構築

    これまで調査してきた回路の有用性が認められれば、必要回路データを抽出し量産化体制を整えます。

ゼミ生の研究テーマ

シミュレーションチーム

回路方程式やスイッチング条件等に基づき回路ダイナミクスを理解し、C言語やMATLABを用いて回路動作を解析します。

シミュレーションチーム
実験チーム

アクリル板や基板に回路素子を取り付け回路を製作し、数値シミュレーション結果と実験結果のフィッティングを行います。

実験チーム
マイコンチーム

マイクロコンピュータまわりの回路設計を行います。また、提案理論をマイコンへ組み込み、回路動作を確認します。

マイコンチーム
回路設計チーム

回路設計ソフトAltium Designerを用いて回路を設計し、基板加工機での回路実装、動作確認を行います。

回路設計チーム